新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
羨ましいくらいキレイな腹筋だ。

「のぼせ上がりそうね、この暑さ」

会計係が扇風機の風力ボタンを中から強に切り替えた。

風力が増しても生温い風には変わりない。

「ガンちゃん、今日は解散しない?」

ガンちゃんは数秒、俺の様子を観察し「そうだな。明日、園芸部を訪ねて枯れた薔薇を見た奴を捜そうか」

カップの片付けをし、生徒会室を出るとガンちゃんが、俺の耳元で呟いた。

「薬、また飲んでないだろ」

「飲ん……だ」

しっかり答えたつもりだったが、喉から出た声は何故か掠れていた。

視界がゆっくりと傾いていく。

窓の外で降っている雨音、誰かが呼んでいる声も何処か遠い。

誰かの手がギュッと、俺の肩を掴んだ。

スーッと体から力が抜けていく。

ふわりと嗅ぎなれない香りがした。

気づいたのは保健室のベッドの上だった。

電灯の明かりが眩しかった。
< 26 / 75 >

この作品をシェア

pagetop