新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「気づいたか?」

「心配したんですよ」

ベッドの傍らにガンちゃんと椿がいて、俺の顔を覗きこんでいた。

「急に倒れて、ぐったりして、生徒会長が背負って、此処まで……」

椿が経緯を話しだしたが、次第に涙声になった。

「起きたか、気分はどうだ?」

保健医はそっと入ってきたかと思うと、俺の額に手を当て訊ねた。

「大丈夫です」

「2時間ばかり寝ていた」

えっ!? と思い、急いで体を起こし、掛け時計を見た。

19時を過ぎていた。

「家に迎えを頼むか、タクシーを呼んだほうがいいのでは?」

俺の事情を知っている保健医の気遣いは、ごもっともだと思うのに、ガンちゃんにも椿にも聞かれたくなかった。

「椿、すまなかった。送っていくから乗って」

玄関まで呼びつけたタクシーにガンちゃんと、助手席に椿を乗せた。
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