新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
自分も息をを切らしているのに、わたしの背中をさすった。

「ポット貸して、冷めないうちにかける」

柊くんはポットを受け取ると、躊躇(ためら)うことなく、紫陽花の根っこに注いだ。

「こんなに走ったのは初めてだ……楽しいね」

柊くんは言いながら少し辛そうに見えた。

1年休学していて、いつも体育の授業を見学していると聞いている。

「椿、生徒会は楽しいか」

「えっ!?」

「生徒会室では訊けないだろ」

わたしは柊くんが何故そんなことを訊くんだろうと、首を傾げた。

「俺は生徒会の人間ではないし、此処には椿と俺しかいない」

「柊さん……」

紫陽花に熱湯をかけるというのは口実で、わたしの気持ちを訊くためだったのかと思った。

「副会長と会計は話しづらいか。一緒いるのは気不味いか」

「どうして……」

声にならない。

自分の気持ちを見透かされている。
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