新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「いつから気づいているんですか」

唇の震えが止まらなかった。

やっと絞り出した声は上擦っていた。

「最初から」

柊くんは紫陽花の花びらに触れながら、ポツリと言った。

「雑用や給仕しながら副会長と会計の顔色をいつも窺っている。何か文句を言われないか、粗相はしていないか。違う?」

ぐうの音も出なかった。

「ガンちゃんとは自然と話すのに、副会長たちとは目を合わせない」

柊くんはわたしのことをよく観ている。

薔薇事件の主導権を握り、パソコンを操作したり、監視カメラをチェックしたり、状況を把握して解説したりしながら。

そんな時間が何処にあったのかと思うくらいに、わたしのことを知っている。

「椿の日誌も椿の生徒会記録も見たよ。よくまとまっているし、解りやすかったし、丁寧だった」

淡々と話す柊くんの穏やかな声が耳に心地いい。
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