新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「へぇ~。俺、地味子が笑っているとこ初めて見たかも」

「地味子、地味子って、何なんだ」

「椿だよ。いつも俯いて下を見て歩いていて、ボソボソ喋る暗い奴だ」

確かに椿は大人しい。

普段、明るいという印象はない。

生徒手帳に記載された基本通りに制服を着て、髪型も眉上パッツンだ。

女子高校生だというのに、飾り気の1つもない。

でも地味子と呼ばれるほどとは思わない。

「気に入らないな。へんな呼び方するなよ」

腹立たしさと苛立ちで、胸がムカムカした。

「椿彩乃だ。2度と地味子と呼ぶな」

俺の険しい声は、休み時間の和やかな空気をピリつかせてしまった。

始業までのわずかな時間は長くても1分なかったはずなのに、ひどく長い時間に感じ、居心地が悪かった。

7時限目終了と同時に、テラスハウスに急いだつもりだったが、到着すると椿は俺を待ち構えていた。
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