新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
霞月には話しておきたいと思った。

「えっ?」

霞月は目を見開いた。

「好きな人がいるからとは言わなかった」

「そう」

霞月は何故かホッとひと息ついたように見えた。

いつの間にか薄暗くなった生徒会室に、月明かりが射し込んでいる。

月明かりに照らされ、窓辺に立った霞月の髪の色が、光っている。

「あ!」

窓から下を見ていた霞月が、無言で俺を手招きした。

霞月は温室を指差した。

「あれは園芸部の部長だな」

霞月が俺の耳に囁いた。

「鍵はスペアキーも顧問が持っているのではなかったのか」

「ああ、確かにそう聞いた」

「嘘だったようだな」

辺りを確かめ、ソッと温室に入っていく。

「新月に向けて準備を始めた……といったところか。薔薇事件、園芸部ぐるみの仕業かもな」

「まんまと騙されたんだな、クソッ」

「静かに」

霞月は言って、素早くパソコンで監視カメラの画像を観た。
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