新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
ティースプーンに茶葉を掬って、ティーポットに入れると、素早く蓋をした。

「4分待ち」

柊くんははそう言って、5個のカップにポットのお湯を注いだ。

本格的な淹れ方だ。

「椿、名前?」

「いえ、名字。椿彩乃(つばきあやの)です」

「かわいい名前だな、椿」

わたしの顔は火照って熱くなった。

4分きっかり。

柊くんはティーポットからカップにローズティーを注いでいく。

「ガンちゃんはローズティーの本当の美味しさを知らないな」

「がんちゃん!?」

岩館直紀(いわだてなおき)、だからガンちゃん。家が隣で幼なじみだし」

柊くんがローズティーを入れたトレーをスッと差し出す。

「冷めないうちに配膳して」

柊くんはティーポットを洗って、流し台にふせた。
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