新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「椿。この後、時間ある?」

わたしが駅に入っていこうとすると、柊くんが訊ねた。

「とくに急ぎませんけど」

「この先に新しくカフェが出来たんだ。行ってみないか」

「わたしと?」

「そう、椿と。こっちだ」

柊くんはわたしの手をとった。

「隣を歩かないか」

手を引かれて歩くわたしに言うと、1歩下がってわたしの隣を歩きだした。

数10メートル歩きカフェの中に入ると、柊くんは「思っていたより落ち着いた感じだな」と言った。

窓際の席に着き、わたしはメニューを眺めながら迷った。

「どうした、決まらないのか」

「えっと……この苺ケーキと紅茶ケーキ、どっちにしようかと」

柊くんは早々に、メニューを閉じていたけれど、わたしのメニューを覗きこんだ。

「両方、頼めばいいだろ」

柊くんはあっさりと言って、呼びリンを鳴らした。
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