新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
柊くんはフォークでケーキをそれぞれ半分に切り、ケーキ皿に乗せると「得した気分だな」と、笑った。

ケーキを食べる柊くんの仕草が、すごく優雅で滑かで見とれてしまう。

柊くんがわたしに話しかけるたび、周りからの視線を感じた。

柊くんはほぼ毎日、女子にコクられているほど容姿も良いし人気もある人だ。

地味子と呼ばれているわたしとは大違いだ。

わたしが一緒にいて釣り合うはずがない。

誘われて嬉しくて、手を引かれるままついてきたけれど「どうして、わたしと一緒にいるんだろう」と思った。

「……椿、椿、どうした?」

柊くんが、ぼんやりしているわたしを呼んでいるのに気づいた。

「わたし……柊さんと一緒にいていいんですか? 柊さんをみんな見てる」

「俺は今日、椿を誘ったんだ。それにあいつらは俺が珍しいだけだ」

意味がわからなかった。
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