新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
柊くんを初めて見た時、綺麗だと思った。

体育の時間に膝を擦りむいて、保健室に手当てをしにいった時だった。

保健室の先生が留守で、どうしようかと思っていると、ベッドに寝ていた柊くんが起き上がって、声をかけてきた。

わたしの擦りむいた膝をみるなり、手際良く手当てしてくれた。

銀髪がきらきら輝いて見えた。

「派手に転んだな。ハードルを飛び損ねた?」

薄い茶色の目が驚いたり、目を細めたり手当てをしながら、わたしの表情を上目遣いで見たり、手当てを終えて優しくなったり、表情がクルクルと変わった。

「何だか、手慣れているんですね」

「そおだな……此処には、ほぼ毎日来るからな」

そう言って、保健室の窓から校庭を見た寂しそうな瞳が印象的だった。

この人が噂の「銀髪の君」かと思った。

「この髪の色が珍しいからだ」
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