新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「ガンちゃん、ローズティーは水出しでゆっくり抽出したほうが美味しいよ。20分くらいでできるからさ。此処、冷蔵庫もあるんだし」

「今度、やってみるよ」

わたしはティーカップを配り終え、席につきローズティーを啜った。

「あ……美味しい。いつもと違う」

「たしかに」

「こんなにも味が違うとは思わなかったな。霞月、何かした?」

「普通に淹れただけ」

生徒会長も副会長も会計の先輩も、そんなはずはないと否定したけれど、柊くんはただ微笑むだけだった。

「ガンちゃん、此処から温室がよく見えるんだな」

柊くんは窓辺から下を見下ろして言った。

まるで発見したように。

「温室の薔薇、上手に育ててるよな。種類もあるし、薫りがここまでする」

「うちの園芸部は、品評会上位入賞の常連だからな」
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