新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「実は気になる奴がいるんだ。だからごめん」

「えっ!? 誰ですか」

女子は俺を見上げてポカンとしている。

「じあな」

俺は身を翻し、上を見上げた。

今日も校舎の窓にギャラリーができ、ピークパーチク好き勝手に騒いでいるようだ。

次の授業は体育、体育館だと言っていた。

見学しようか、保健室に行こうか考えていると、椿が体操服で渡り廊下を歩いているのが見えた。

「椿、体育か?」

呼び止めて訊ねた。

「はい。体育館でバスケットボールです」

「ヘェ~。俺のクラスも体育館だ。応援するから頑張れよ」

「はい、頑張ります」

いつもは退屈でしかない体育の授業、ワクワクするのは初めてだ。

「椿。放課後、何もないなら一緒に帰らないか」

ワクワクついでというか、勢いというか誘ってみる。

「いいですよ。テラスハウス前で」

「ああ」

椿は手をふり、足早に走っていった。
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