新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
体育館の床に、腰を下ろして試合を観ている。

気がつくと椿の姿を追っている。

相手チームのマークを交わし、シュートした椿はカッコ良かった。

上手いもんだなと思う。

ガンちゃんの話や地味子と呼ばれていると知り、引っ込み思案で運動音痴のイメージがあった。

全く違う。

下手に声を出して応援するわけにもいかず、大人しく見学していた。

ドリブルを妨害され弾かれたボールが、いきなり此方に向かって飛び出してきた。

「柊!!」

ぶつけられる寸前で、どうにか避けたが動悸が半端なかった。

「大丈夫か、当たらなかったか」

まるで女子相手かと思うくらい大袈裟に、心配される。

「顔色悪いぞ、保健室に」

「いや、いい。少し驚いただけだから」

女子側のコートからも心配そうに、此方を窺っている。

心配顔の椿が見えた。

「大丈夫だ」と手を上げ、拳を開いたり閉じたりして見せた。
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