新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
どうやら俺が自宅で薔薇を育てているのを聞いたらしい。

ドライフラワーの作り方を聞いてきた。

温室で椿が撮影してきた画像を見た限り、園芸部が作っていたドライフラワーは見事と言う他なかった。

素人であれだけのモノができれば自慢しかないだろう。

「柊、これ。ちょっとドライフラワーにするには開きすぎてしまって」

園芸部部長はカーマイン色の薔薇を数本「やるよ」と、俺に突き出した。

「ヴァンパイアの噂に、お前を少し利用したお詫びだ」

こいつ、生徒会が捜査したことに気づいているのか?

思わず、そう思わせるくらいに険しい顔だった。

俺は「口止め料」だと直感した。

「どうも」

なに食わぬ顔で薔薇を受け取った。

「その薔薇、どうしたんですか?」

椿が目敏く薔薇を観て訊いてきた。

「園芸部の薔薇ですよね、たぶん」

「部長からもらった」
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