【夜焚きに至る-よたきにいたる-】
──梅雨も明け、これからうだるような暑さに耐える日々が続くと思うと、溜息しか出ない。
炎天下、住宅街は暑さのためか、人影の一つも見当たらない。家々の庭に植えられた木々からは、蝉のけたたましい鳴き声が響き渡っている。
俺はふと、草が刈り込まれた空き地に目をやる。
半年ほどまえ、ここには二階建ての家が建っていた。十年以上も前に住人が忽然と姿を消してから、誰も住んでいなかったと近所のおばさんが話してくれた。
老朽化が激しく、そんな話も合わせてか変な噂が立ち、それがSNSで広まってしまい肝試しだと言って不法侵入が絶えなかった。
仕方なく役所だか自治体だかが一旦、解体費用を肩代わりして取り壊す事になった。
予想はしていたが土地の持ち主は見つからず、解体費用の回収は無理だろうと町民たちは落胆した。
家の中にあった、お金に出来そうなものを集めても、かかった費用としては雀の涙程度でしかなかったそうだ。
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