【夜焚きに至る-よたきにいたる-】
それから数日後、バイトの帰り二十一時を過ぎたあたりだろうか、前に見たときよりも空き地の穴が大きくなっている事に気がついた。
なんだ? 同じ場所を掘り続けているのか?
初めに見たときは丼鉢くらいの大きさだったのに、深さまでは解らないが、人がひとり、すっぽりと入るくらいのサイズになっている。
掘り始めたことで意地にでもなっているのだろうか。
子供の頃は、くだらないことでも意地になって続けた記憶があるが、ここにもそんな子供がいるんだなと、さして気にすることなく過ごしていた。
しかし、それから数週間が経った頃に、変な噂が町に流れ始めた。
──深夜、あの空き地に黒い影がぼうっと立っていて、通りかかった人に手招きをする──というものだ。
廃屋があった頃は、夜中に幾つもの青い炎が浮いていて、それを見た者は行方不明になるというものだった。
それとはまた違う怪談話が、同じ場所で発生するとは、人間の想像力はたくましいなと感心する。