愛なんて知らなかったのに

この世界から私がいなくなってもきっと



みんなの日常は変わらない

明日も変わらず朝のホームルームが行われ

1日を過ごして家族の待つ家に帰るんだろう


私ひとりの命なんてそんなものだ

分かってる、、、私がいなくなって悲しむ人間なんてこの世にたったひとりもいない


「死にたい、、、、」

ここから飛び降りれば楽になれる?
こんな人生終わらせられる?

人が居ない深夜を選んだせいかあまりは静まり返っていて、自分の呼吸だけがやけにうるさい

あと一歩、、、一歩踏み出せば、

泣くことも
自分をこれ以上傷つけることもなくなる

大丈夫、、、怖いことなんてない


さん、、、に、、、、いち、、、




「ねえ、飛ぶの?」

後ろから急に低い男の人の声がして思わず後ずさる

「っっ、、!?」

振り向けば同じ年くらいの男の人が立っていて

誰、、、こんな時間に、、、


「君さー、、死ぬ前に、、、話し相手になってよ」
眠れないんだよね、とイタズラっぽく笑うこの人は何を考えているんだろう?


「えぇー、、無視?」


いや、、、、無視とかじゃなくて、、、

普通この状況の人にそんなテンションで話しかける?

「ま、いいやとりあえずさ名前、教えてよ」

最悪、、、、

この日のためにずっと生きてきたのに

こんなタイミングで
こんなやつに邪魔されるなんて

つくづく思う、、、私には運がない

また、、、、明日に持ち越しか、、、


「え、ちょ、待って、帰るの?」

なるべく顔を見ないように下を向いて昇降口に歩き出す

バッ!!

「っ、、、な、、に、、」

「死なないよね?」

「は?」

「自殺なんてしないよな?」

「、、離して!!!」

「やだ、離さない、ちゃんと約束するまで離さない」

何でこの人こんなに必死なの!

「うるさい!!あなたに関係ないじゃない!!」

振り解こうとしても解けないほどの強い力

「関係なくない、、、だって俺がここに今日来たから」

さっきから何言ってんのよこの人

「声をかけたから、君が踏み出すのを止めたから、出会ったから、だから、、関係なくないんだよ!」

なんでこの時、この人がこんなに必死だったのか
私がその理由を知るのはもう少し先のことだ 

だけど、瞬間的に思った、思ってしまった

まだ、、、意味があるかもしれない、
私の人生に、、、

そう思わせる力がこの人の真っ直ぐな目にはあった

ほんのさっきまで死しか頭になかったこの私に




















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