冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
家に帰り着き、2階にある自分の部屋へ向かう。
階段の壁に取り付けられている大きな窓からふと外を覗くと、今にも太陽が沈みかけている茜色の空が広がっていた。
わたしはそれを確認し、光を透かすことのない分厚いカーテンでシャッとその茜色を覆い隠す。
しっかりと施錠をし、家中の窓のカーテンを締めていく。2階に上がり、1階と同様に外の世界が見えるものを遮断する。
そしてこれから、百鬼夜行のような危ない夜が、始まる───。
カァカァと鳴くカラスたちの声。
バサバサッと飛び立つ野生のコウモリたちの羽音。
ザワザワと不気味に茂る木立の葉。
太陽が西に完全に沈み、夜の深い闇がこの街をどんどん覆い隠す。
外からは住民の生活音が聞こえることはなく、変わりに“あのお方”たちの足音がどこからか響き渡ってくる。
わたしはそっと息を潜めて、自分の部屋に閉じこもった。
わたしが住むこの都市には、主に2つの勢力が存在している。その勢力はそれぞれにこの都市にある2つの街を支配していた。