冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
わたしはその笑い声を聞いて少しムッとして、「別に何でもいいです」と語気を荒げた。
「………なんでも、いいの?」
少し間をおいてから、返されたそのお言葉。
その質問の意図を探るために、恐る恐る覗き込んだ飛鳥馬様の漆黒の瞳には、何かがキラキラと光るような、そんなわんぱく感がある気がした。
視線が交わり、飛鳥馬様の漆黒がわたしの気弱な瞳を射抜く。
「じゃあ、“あやちゃん”って呼ぶ」
「……っ、!!?」
これは恐らく、言うまでもなく、過去イチ番の衝撃。
驚いてカチンコチンに固まってしまったわたしを見て、楽しげに笑った飛鳥馬様の笑顔は、やっぱりどこか純粋無垢な幼さを感じた。
足が長い長身の飛鳥馬様に抱き上げられていると、少しだけ見える世界が変わったように思える。