冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「飛鳥馬様、どうされたのですか……?」
「……っ、いや、まさか本当にしてくれるとは思わなくて」
わたしから目線を逸らした飛鳥馬様の頬が、暗闇の中僅かに赤く染まっているのが見えた。
キュッと強く結ばれた唇は、少し震えている気がした。
もしかして、もしかしてだけど……いやでもそんなはずは。飛鳥馬様、照れていらっしゃる……?
口には出さないものの、そんな考えが頭に浮かぶ。
ていうか、“本当にしてくれるとは思わなくて”ってことは、さっきの命令は冗談だったってこと……?
それなら、今わたしがやってることって、結構恥ずかしいんじゃない……っ!?
そして、軽くパニックに陥ってしまったわたしは、どうすることも出来ずに飛鳥馬様のお膝の上で、顔を俯け火照った頬を手で隠すのみだった。
「……あやちゃん?どうしたの」
俯いたままでいるわたしを訝しく思ったのか、飛鳥馬様の両手がわたしの両手に触れて、優しく前を向かされる。