冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
飛鳥馬様は、わたしの腰に添えていた両手をそこから離して、わたしの両手を掴み、自分の肩の上に置いた。
こ、これ……っ。わたしが飛鳥馬様に抱きついているみたいな図になるんじゃ……っ。
「あ、あすま様……っ。それはちょっと…、」
わたしのような庶民が飛鳥馬様に触れるなんて、無礼にも程がある気がします……っ!
「なに?これじゃ不満なの?あやちゃんって、大人しそーな見た目によらず本当ははしたないんだね」
「は、はしたない……?」
さっきから会話が噛み合っていない気がする。
そのせいで、飛鳥馬様に対するわたしの敬語が乱れてきてしまっている始末だ。
「あやちゃん、顔真っ赤。おれのために無理してくれてるの?」
こうやって質問をしてくるくせに、その漆黒の瞳は自らが望む答えしか許さないというように、わたしをじっと見つめてくる。
「そ、そりゃあしてますよ……。
飛鳥馬様は、わたしみたいな庶民なんかには手も届かないくらい上の存在の、凄いお方なのですから」