冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
伊吹くんとだって、こんなことしたことないのに……。
そんなことを頭の片隅で思いながらも、その大半は失礼に当たらないような言葉を必死に選んで、それを震える声で紡いでいる。
「はは、うん。───おれは凄いひとだね」
小さく首を傾げて、僅かにはにかむそのお姿は、本当にわたしの目が溶けてなくなっちゃうんじゃって心配になるくらい、様になっていた。
飛鳥馬様の大きくて綺麗な手が、わたしの腰に近づき、ぎゅっと両腕を腰に回される。
柔く、優しく、静かに抱きしめられた。
飛鳥馬様のお顔が、どんどんわたしに近づいてくる。
ぎゅっと強く目を瞑り、これから起ころうとしているであろうことを覚悟した。
「……っ、え?飛鳥馬、さま……?」
キス、されるのかと思った……。
────けれど。
わたしの首筋に、ゆっくりと顔をうずめた飛鳥馬様。
直に触れた飛鳥馬様の肌は、生まれたばかりの赤ちゃんのように柔らかくて、ずっと触れてたいって思ってしまうくらい、優しい触れ心地をしていた。