冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
窓を伝う雨のしずくを永遠と見つめる、寂しげな横顔のあの頃のわたしに。
「……っ、本当に、ほんとうにそう思ってくれてるの?」
「はい、思ってます」
だから、伝えよう。
寂しそうな表情をするあなたに、真っ直ぐに伝えよう。
「…ふふっ、うれしい」
わたしのその言葉によって、あなたの瞳に光が戻るのなら。あなたが、もうそんなふうに悲しそうな表情をしなくて済むのなら。
飛鳥馬様が、笑ってくださるのなら。
「あやちゃんは、おれを喜ばすのが上手だね」
「別に、そんなことは……」
わたしの言葉に、満足気に弧を描く形の良い唇。
嬉しそうに微笑んだ飛鳥馬様の表情は、やっぱり幼き子供のように、どこまでも曇りない純粋無垢な笑顔だった。