冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
わたしに対する口調、姿勢、礼儀その全てが、あの日の夜とはまるで別人だ。
それに戸惑いを隠せなくて、真人という男と飛鳥馬様に交互に視線を送る。
だけど、飛鳥馬様の横顔は依然としてどこか冷たさを纏っていて、話しかけられる雰囲気ではない。
だからといって、この真人という男の謝罪にどう返事をすれば良いのかも全く分からなくて……。
「え、えと……」
目線がキョロキョロと右往左往して、突然の謝罪への動揺のせいで一向に定まらない。
真人という男は、未だに右手を左の胸の位置に添えて、深いお辞儀をしている。
早く、何か言わなきゃ……!
さすがにずっとその体勢のままっていうのはつらいよね。
「……っ、わ、わたしはもう大丈夫です!首の傷も、だいぶ治ってきてますし……、」
もう、あんな目に遭うのは御免だけど。
それでも、夜の世界に勝手に足を踏み入れてしまったわたしを怪しんで、真人という男は責任感を持って拘束したのだと思うから。
悪いのは、わたし。