冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「は、はい……。よろしくお願いします(?)」



わたしがそう言ったのを境に、飛鳥馬様がまた足を一歩前に、歩き始める。

都心から少し離れたこの場所は、街を照らす街灯なんてものはほぼなくて、足元が暗くて何も見えない。

それでも、飛鳥馬様は慣れたように迷いなく進んでいく。

向かう先は、霜蘭花の巣窟。


わたしたち東ノ街の住民は、皆それを──皇神居(こうしんい)──と呼んでいる。


全てを圧倒するようなその巣窟の名称には、皇帝あるいは神様が住まう居所、という意味がある。


どこかの国の皇帝陛下が住まうような宮殿みたく広大で巨大なその建物。


世界的に有名な大企業会社の本社のビルをも越してしまうほどの、高い高い門。


門だけでそこまで高いのだから、建物の頂上なんかは空に浮かぶ雲に渡れちゃうんじゃないかと錯覚してしまうほどのどデカさだ。


内閣総理大臣の一生涯のお金を積み込んでも決して建てられないと思うほど、振り返って見た皇神居は壮大で、偉大すぎた。

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