冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
この東ノ街で1番高い建物。この街の摩天楼とでも言うべきか。
荘厳な雰囲気を醸し出しながらそびえ立つ、立派なその建物。
この街では、この皇神居よりも高い建物を作ってはいけないという掟がある。
皇帝が住まう居所以上に、高さの高い建物を作った場合は、その団体を合わせ、建設会社もろとも永久にこの街から追放する───。
そんな、恐ろしい決まりというものが存在するのだ。
「あやちゃん、霜蘭花に来るのははじめて?」
飛鳥馬様の綺麗な瞳がわたしを捉える。
何もかもを呑み込みそうな漆黒とバチッと目が合って、心の準備が出来ていなかったせいかビクッと肩が震えてしまう。
「も、もち、ろん……っ。初めてですよ」
ああ、情けない。盛大にカミカミになってしまった。
どうして、そんな答えが決まっているようなことを聞いてくるんだ。
飛鳥馬様だって、分かっているはずなのに。
わたしたち東ノ街に住む住民が、霜蘭花の棲み家に近づくことさえ許されていないことぐらい。