冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
未だにわたしと目を合わせることなく、俯きがちにそう呟いた飛鳥馬様。
その声に何だか覇気がなくて、俯くその姿に元気がないように見える。
飛鳥馬様は1度深く息を吸うように肩を上下に揺らし、ようやくお顔を上げてわたしを見据えた。
「あやちゃんって、彼氏とかいるの」
「……っ、へ?」
どうして、飛鳥馬様がそんなことを聞くんだろう。
そんなことを聞いても、飛鳥馬様にとっては得にならないのに……。
そう思ったけれど、何にせよ皇帝の質問に答えないという選択肢はないので、本当のことを告げる。
「……い、います、よ」
だから、この状況はマズいんです。
とまではさすがに言えなかった。
わたしの返答に、カッと目を見開いた飛鳥馬様。
わたしを抱きしめるその腕に、力が入った。