冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
すると、驚いたことに飛鳥馬様が廊下に足を踏み入れたその瞬間、廊下の壁に連なって取り付けられていた明かりが次々に火を灯していった。
真っ暗だった廊下が、仄かにうごめく炎によって妖しげに照らされる。
その光景に、わたしは思わず息を呑んだ。
美術館の画廊のように幅が広い廊下には、真っ赤に染まる真紅のカーペットがずっと先まで敷かれていた。
飛鳥馬様、少し様子がおかしいな……。
わたし、また何か気に障るようなことを言っちゃったかな?
不安になりながら、飛鳥馬様に連れられて必死に足を動かす。
一体どこに向かっているんだろう、という疑問は、この大きすぎる建物内では無意味で、全く検討もつかない。
つまり、そんな疑問さえ抱けないほどに、この皇神居の建物内は外から見て分かっていたが、広大だった。
きっと、わたし1人でこの建物内を歩いていたら、一生出口には辿り着けそうにない。
必ず迷子になってしまう。