冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


廊下を進んでいくと、壁が大きな間隔で開けているドアなしの部屋がいくつも見えてきた。


少し気になって、視線をすぐ近くの部屋に向けると、その先には大きなビリヤードの台があった。


仄暗いオレンジの電球が、その部屋を微かに照らしていた。その光景は、そう……まるでどこかの高級バーのような雰囲気。


よく見てみると、ビリヤードの台の他に壁に取り付けられたダーツや、お酒やワインなどが綺麗に並べられている棚、

そしてその目の前にカウンターがあり、その上には透明に透けるワイングラスが綺麗に並べて置いてあった。


視線を向けていられたのはほんの2秒間ほどだったけれど、その短い間でこの皇神居の凄さを思い知る。


飛鳥馬様の歩く足は止まらず、廊下が左右に別れているところで左に曲がった。


さっきのバー的な部屋、アルコールの飲み物しか置かれてない雰囲気だったけど、飛鳥馬様はまだ高校生なんだよね……?


飛鳥馬様の広い背中を見つめながら廊下を歩いていると、突然そんな疑問が頭に浮かぶ。

でも、そんな疑問もすぐに(しぼ)んで消えていった。

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