冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「なんで離そうとするの、もっと温めてよ。おれの手、まだ冷たいよ?」



飛鳥馬様は意地悪だ……。

こうやっていつもわたしを困らせるようなことばかりしてくる。

今だって……、首を傾げて楽しげな色をした瞳がわたしを捕らえて逸らすことを許してくれないんだもん。


逸らしたくても、逸らせない。どこまでも続きそうなその漆黒の瞳は、それをわたしに絶対条件としている。



「わ、わたしなんかが……っ、飛鳥馬様に触れてもよろしいのですか」

「あやちゃんは“なんか”じゃない。またそうやって自分のこと見下すようだったら、───次はその唇、塞ぐよ」 



冗談を言っているとは思えない飛鳥馬様の真剣な瞳。

その漆黒にまっすぐに射抜かれて、息を呑む。

わたしの手と触れていない方の飛鳥馬様の左手が、わたしの唇に触れて、優しく撫でられる。


その手はやっぱり、冷たかった。

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