冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
だからわたしは、さっきの飛鳥馬様のお言葉を思い出して、勇気を振り絞って自分の右手で飛鳥馬様の左手を握った。
飛鳥馬様のお顔に視線を向けると、そこには嬉しそうにはにかむ少年のような笑顔があった。
皇帝でも、神様でも、なんでもない。
飛鳥馬様は、本当に無垢な笑顔を浮かべて、わたしを優しげな瞳で見つめていた。
「……どうして、飛鳥馬様の手はこんなにも冷えきっているのですか」
……だから、かもしれない。
その幼い笑顔を見ていると、飛鳥馬様がわたしと同じ世界に住む人間だと錯覚してしまう。
だからわたしは、こんなふうに深く踏み込んだ質問を、飛鳥馬様にしてしまったんだ。
……っ、どうしよう、生意気だって思われたかな。
今度こそ飛鳥馬様を怒らせてしまうんじゃないかな……っ。
恐る恐る、飛鳥馬様と目を合わせた。
だけど、そんなわたしの不安とは裏腹に、飛鳥馬様は未だに優しい瞳をしている。