冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
『──謝んなくていい。……てか、謝んないで』
振り向いてまず視界に入ったのは、あやちゃんの真っ青な顔。そんな怯えた表情をさせてしまっているのが他でもない自分だという事実に、胸が痛む。
この時は、自分でも低い声が出てしまったと思う。
今までは、なるべく怖がらせないように優しい声音を心がけて接してきた。
それなのに、あやちゃんがいちいちおれに謝ってくるのが何だかすごくいやだった。
まるで自分が腫れ物のように扱われている感じが、相手があやちゃんだから尚更いやだった。
『も、申し訳……っ、は、い』
『……ん、それでいい』
おれの言葉に素直に頷いたあやちゃん。
無意識のうちに、小さな頭の上に手が伸びる。
そして同じく無意識であやちゃんの頭に触れた。
あやちゃんの頭を撫でていることをようやく自覚したおれは、ヤバいと思ってすぐに手を離そうとした。