冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
その直後───
『……っ、あやちゃん?なにしてるの』
あやちゃんの頭から離そうとしていたおれの手は、次の瞬間にはあやちゃんの小さな手に包まれていた。
その時のおれは、突然のことにただただ驚くばかりで、限界にまで自分の瞳孔が見開いていくのだけが分かった。
極寒の中で冷え切って凍えてしまったように冷たいおれの手が、あやちゃんの確かな温かさに包まれて、微かに疼く。
体中に張り巡らされている動脈の中を、ドクンドクンッと大きな音を立てるように一瞬で血液が流れていく。
逆流してしまってるんじゃないかって心配になるほど、おれは動揺していた。
自分の手を包み込む、他人の温かさに。
『……よかった。ちゃんと、あったかくなった』
何の邪心も抱かずに、その優しさの奥に垣間見える下心さえ感じさせずに、あやちゃんはほっとしたように表情を緩ませて、微笑んだ。
──心から安心した声と一緒に。
信じられないくらいの幸せを感じた。
『……っは!わっ、わたしってば……っ、何やって』