冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
『……あやちゃん?』
『す、すすすすみません……っ!今すぐ離すので──』
ようやく自分がしていたことの重大さに気づいたのか(おれにとっては重大なことではないが)、あやちゃんがすぐに手を離そうとした。
だけどおれは、その温もりをまだ感じていたくて、思わず口を開く
『へ……っ、?』
……前に、あやちゃんの手を掴んだ。
目をまん丸くさせて、2人の繋がれた手とおれの目を交互に見るかわいいあやちゃん。
『なんで離そうとするの、もっと温めてよ。おれの手、まだ冷たいよ?』
そんな言葉を発したおれの声は、まるで甘えん坊のように丸みを帯びたものだった。
そんなことに、自分でも驚く。
他人にも、この自分自身にさえも、甘えたなところを感じさせない素振りを見せてきた。