冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


そんな思いが、あやちゃんのその真剣さに一気に吹き飛ばされていく。

気づいた時には、口を開いて

おれは“そのこと”を口にしていた。



『え……?』



決して、誰にも理解されないその理由。

動揺を隠しきれないという様子のあやちゃんが、おれの言葉を訊き返した。



『血筋って、手の冷たさに関係する場合があるのですか……?』


そして、おれはその質問に対する答えを語りだした。



───おれにまつわる黒いウワサに必ず付随してくる、“冷酷”ということば。

飛鳥馬家が代々受け継いできた霜蘭花という名の組織、それを東ノ街の住民は暴走族と呼んでいるらしい。


実際は、ぼーそうぞくというかわいい枠組みに収まる組織では決してないが。

あえて言うならヤクザ。


だけど霜蘭花は、暴走族とかヤクザとか、そういう類の組織ではないのだ。

言葉で言い表すには難しいほど、おれから見ても霜蘭花は何にも屈しない圧倒的な強さと、権力と、財力を有している。

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