冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
15代目霜蘭花派皇帝。
その肩書きは、信じられないほどに重く、ずっしりとおれの体全体に覆い被さる。
この地位は、自らが望んで手に入れたものではない。
ただ、飛鳥馬家の長男として生まれてしまった天命が、おれをここまで苦しませる。
生まれた時から、おれの体温は以上なほどに低かった。
それは、おれの父上も、叔父上も、先祖だって同じだ。
この体を纏う空気さえも、発する声、言葉さえも、全てが冷たい。これはもう、生まれ持ったものだからどうにもならない。
おれの手が冷たいのは、飛鳥馬家の者に流れる血が、そういう血筋だから。
“冷酷”というものを生まれ持ってこの世界で生きているから。
だからおれの手は、こんなにも冷たいんだ。
他人の温かさを求めるようになったのは、きっと自分の冷酷さに気づいてしまった“あの時”から───。