冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
わたしの反応を愉しむような、そんな声。
口調が随分と崩れた飛鳥馬様は、不躾かもしれないけど、ちょっとだけかわいい。
そんなことを思い気が緩んだおかげか、めちゃくちゃ緊張して強く握りしめていた拳の力が、ふっと抜けていく。
「……もしかして、まだおれのことが怖い、とか?」
なぜか途切れ途切れに、少し抑揚のない声でそう呟くのが隣から聞こえ、わたしは反射的に顔をそちらに向けて、口を開いていた。
「そ、それは違います……っ。違うんです、ただ…」
「ただ?」
わたしの続きの言葉を、優しげな表情を浮かべて静かに待つ飛鳥馬様。
肘掛けに頬杖を付いて、ゆったりとしたお姿でこちらを見据えるその姿は、誰が何と言おうと美しい。
「あまりにも、飛鳥馬様が美しすぎて、お綺麗で……」
「ふふっ、なにそれ。あやちゃん、おもしろいこと言うね」
「こっ、これは冗談などではなく本気でそう思っていて……!」
わたしの言葉を真剣には受け取ってくれないのがひどくもどかしい。