冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
俯いていたわたしの頬に、ひんやりとした冷気がかかる。
それが飛鳥馬様の手だと気づいた時には、わたしはもう漆黒の闇に吸い込まれそうになっていた。
飛鳥馬様の大きな手が、わたしの頬を撫で、顎下に持っていかれ、ゆっくりと優しく顔を上を向かせられた。
「おれ、あやちゃんにはかっこいいって言われたいのになあ」
「……っ、」
「わたしじゃなくても、飛鳥馬様には沢山そう言ってもらえる女性がいるのではないのですか……」
どうして、わたしなの。どうして、わたしに限定するの。
わたしがその言葉を言わなくても、飛鳥馬様なら「かっこいい」と言ってくれる女性の方々が沢山いるだろうに。
「……もう、あやちゃんのばか」
「…えぇっ。ば、ばか……??」
唇をキュッと引き結んで、拗ねたように眉をしかめる飛鳥馬様の、不機嫌な声。
「他の女なんて……、いない。おれには、あやちゃんだけ」
だから、“だけ”って何なんですか……!!