冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
もしや飛鳥馬様、誰か1人を限定しないと気がすまない性分なのですね!?
1人で焦り、テンパる高校2年、16歳、七瀬彩夏。
ちなみにまだ誕生日(9月24日)は来ていない。
「そんな……、どうして、なんで。…なんで、わたし……?」
敬語を使わないと失敬に当たるだとか、飛鳥馬様の反応が怖いだとか、そういうことは一切考えられず、語彙力が崩壊する。
「…自分で考えれば。そんなの」
倒置法……。
飛鳥馬様がわたしからフイッとお顔を逸らしたのは、これが初めて。
お人形のように綺麗で浮世離れしたお顔から、呑み込まれそうになるくらい暗く深い漆黒の瞳から、耐えきれなくなって目を逸らすのはいつもわたしだったから。
あれ…、ちょっと暗くて見えづらいけど、飛鳥馬様の頬っぺたちょって赤くない……?
ほんのりと微かに桜色に染まっている、飛鳥馬様の陶器のように綺麗な色白の頬。
「あ、飛鳥馬様……。体調、優れないのですか」
「……」