冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
抑えられない執着心
-伊吹side-
『異常者』
それは、俺の幼い頃からの異名。
悪く言えば、ただの悪口。しょうもない渾名だ。
俺自身もそう思っているから、別にそう呼ばれるのは気にしていない。
ただ、自分のことを何も知らない連中にそんな言葉を吐かれるのは心底胸糞悪かった。
そういうわけで、幼い頃からどこか尖っていた俺は両親からもあまり良く思われていない。
誰でもいいから、教えてくれよ。
残虐なこの世界において、“幸福”とは何なのかって。
俺の何が足りなくて、こんな世界を生きていかなくちゃいけないんだ。
両親にも、友達にも、自分が信じたたった1人にも見放されて、それでも生きていかなければならない理由。
非力な自分を助けてくれる人間はいない。
『…っ、あ、あの!これっ、落としましたよ?』
『───…え?』