冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ポタリ、ポタリ、わたしの首から滴る真っ赤で鮮明な血が黒いアスファルトの上に落ちては染みていく。
「…ぁ、う……ッ!!」
「大人しくしていなさい、と言ったでしょう?このナイフで今すぐにでも貴女の首を切り落とすことだって容易いのですよ」
だから素直に私に従いなさい、と言った声に今までは急激な焦りのせいで感じることの出来なかった既視感を覚える。
その既視感は段々と確実で強固たる確信へと変わっていき、わたしははっと息を吸った。
───わたしの背後で聞こえるその声は、あの時コンビニに入った瞬間に聞いた声と酷似していたのだ。
感じたことのない痛みに目を強く瞑り、がっちりと肩に回されたスーツ男の腕の拘束と痛みに耐える。
するとどこからか、複数の足音がわたしの方へ向かって近づいてくるのが聞こえた。
そっと開けた視界の先。三人分の黒い革靴が目に入る。足音はわたしの目の前まで来るとピタリと止んだ。
「───飛鳥馬様、ご無沙汰しております」