冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
飛鳥、馬………っ、!!?
それって、その名前って───…ッ。
あのお方の、────。
スーツ男の口から発されたその名前は、この街に住む誰もが知るお方の尊い御名前だった。
「お前……、この女はどうした?」
飛鳥馬様のお顔を直視するなど許されるはずもなく、わたしは上げようとしていた顔を思い切り下に俯ける。
「この女性は、私たちが生きる夜の街に無断で足を踏み入れた不届き者です。ですから、飛鳥馬様直々の刑罰を───」
口を開いて反抗することも身動きを取ることも出来ないこの状況。これこそ絶体絶命と言える。
あぁ、わたし、これから死ぬのかな……。
漠然とした死への不安が、今とても身近に感じられる。わたしは不届き者だから、このお方の手によって惨殺されてしまうのだろうか。
「真人……、おれ、ただでさえ今日は疲れてるんだよ。さっきの銃声が聞こえなかったのか?おれを襲った霜華の奴らを追っ払ったばっかなんだけど」
「き、聞こえておりました……。配慮が行き届かず誠に申し訳ありません」