冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
他でもない大切な彩夏を守るため、だろう?
そんな存在に、どうして俺は憎しみを抱いていたのだ。
愛する女性を、どうして疑うなんてことが出来たのだ。
俺にとっては彩夏が全てで、彩夏なしでは生きられなくて、彩夏が俺から離れていくのなら、死んだ方がマシだって本気で思う。
さすがに重すぎる彼氏だと思う。俺がこんなだから、彩夏を怖がらせてるっていうのも、ちゃんと自覚してる。
怒りを抑え、地から足が離れるくらいに高く持ち上げていた飛鳥馬麗仁の首根っこを離して、俺はそいつに背を向けた。
飛鳥馬麗仁がドサッと倒れる音が背後から聞こえたが無視をして、彩夏の家の扉の前まで行き、インターホンを押す。
……お願い、あやか。俺、もう疑ったりなんかしないから。だから、早く出てきてよ。
後ろに飛鳥馬麗仁がいるというのに、こんなことしたら2人のカンケイがバレてしまうというのに、俺はがむしゃらだった。がむしゃらすぎた。
────それでも。
彩夏がその家から笑顔で顔を出すことはなかった。
どういう仕打ちなんだろうな。俺が悪かったのかな。