冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


───いや、違う。

相手が彩夏だから、だ。


彩夏だったから、俺は彩夏がなるべく苦しまない最後にしたかった。


……だって、さ。最後くらい、格好つけたいだろ。

それくらいの我儘、許してよ。


彩夏と飛鳥馬麗仁のいる方へゆっくりと歩を進めていく。



「伊吹、くん……っ」



彩夏の横を通り過ぎる時、小さくて細い手が、俺の制服の袖を掴んだ。


心臓がドクン…ッと大きく高鳴る。



「…っ、ごめんなさい……。わたし、どこまでも最低で……っ──「彩夏」



君に言って欲しい言葉は、謝罪の言葉なんかじゃない。


そんなふうに自分を責めないで欲しい。



「………彩夏は俺のこと、好きでいてくれた?」

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