冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
そっと彩夏の顔を見つめる。
あの入学式の日に見た茶色の瞳は、今はうるうるとした涙で潤んでいる。
だけど、曇ることを知らなくて、どこまでも透き通るように綺麗なのは、去年から少しも変わらない。
「…っ、うん!伊吹くんのこと、凄く好きだった。大好きだった」
「ははっ、そっか。……そう思ってくれてたんなら、俺はそれだけで報われるよ」
なんせ、俺の一方的かつ強引なやり方で告白をしたんだしな……。
それを断りきれずに頷いて、もしかしたら彩夏はこれまで付き合ってきた間も本当は俺のことなんか好きじゃないんじゃないかって不安になってたけど。
……良かったよ。少しの間だけでも、彩夏の気持ちが俺にあって。
すると、彩夏がまた口を開いたから、俺は俯けていた顔を上げた。
「──それなのにこんなことになって…ごめ…っ、」
「あー、また謝ろうとしてる。謝罪は禁止」
最後だから、彩夏に触れることを許してよ。