冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
変わり果てた日常
あれから何週間が過ぎたのか、あまり覚えていない。
伊吹くんがいなくなった日々は、わたしにとっては不自然なものだったと思う。
何か大切なものを失ってしまったように、ポッカリと空いた心の穴は塞がることを知らない。
「あーやかっ!なぁに悩んでんの」
「……あ、美結ちゃん、おはよう。早いね」
スクールバッグを背負い、朝早くに登校してきた美結ちゃんに、机に伏せていた顔を上げて挨拶をする。
「おはよ。てか彩夏だって相当早いじゃん」
「うん、まあね。あはは」
わたしは最近、あることに相当頭を悩まされている。
それも、誰にも想像できないような“あり得ないこと”に。
きっと、この悩みを打ち明けても「頭打ったの?大丈夫?」と心配されて、信じてももらえないような気さえする。