冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
───わたしの最近の悩み。
それは、毎日のように飛鳥馬様がわたしの前に現れるようになったこと。
それも、決まって放課後。
あの春の朝、飛鳥馬様がわたしの前に急に現れて廃墟が立ち並ぶ小さな通りへ引き連れてキスをしてきた場所と、今わたしがいる場所は全く同じ所だ。
季節はもう梅雨が明け、本格的に夏へ移ろうとしている。
飛鳥馬様から半強制的にラインを交換させられたのは、つい先日のこと。
「わたし、昨日も言いましたよね。もう2度とこんな真似はしないでください、って」
「ふふっ、あやちゃんが怒ってるー」
「……ふざけないでください」
飛鳥馬様はベンツの後部座席の窓を開け、そこから外にいるわたしに話しかけている。
そしてわたしは、もう飛鳥馬様に対して気は使わないと決めていた。
「あやちゃんさ、おれに対して当たり強くない?おれの気のせい?」