冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
後ろから、飛鳥馬様の慌てた声が嫌でも聞こえてくる。
まだ太陽の出ている明るい時間帯に、飛鳥馬様がこの世界にいるというだけでも異常事態なのに、一体何なんだ。
ただの庶民のわたしに、皇帝である飛鳥馬様がここまで付き纏う理由は。
もしかして飛鳥馬様って変人なのかな……?
なんていう失礼過ぎることも考えたけど。
「あやちゃん……!いつも言ってると思うけど、お願いだからおれに家まで送らせて」
「ど、どうして…ですか。なぜ飛鳥馬様がわたしにここまで……、」
飛鳥馬様の車がわたしに追いつき、そこでわたしも足を止めてそう言った。
縋るようなその声に、動揺が隠せない。
わたしみたいな庶民に、ここまで纏わりつくのはどうしてだろう。その理由は、一体何……?
考えられる理由は、ただ1つ。
───こうなってしまったのは、あの夜のわたしの判断ミスが問題なのかもしれない。