冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


なんで、どうして……。

これでも、飛鳥馬様はわたしを敵として見ないの……?


敵の彼女なのに……、わたしは飛鳥馬様にとって最大限利用できるただの手駒だと分かったはずなのに……。



『だから何って……、わたしは、言わば飛鳥馬様の敵なんですよ……?なのにどうして、』

『どうしてあやちゃんのことを悪く見れないのかって?そんなの、最初から決まってるでしょ』

『……?』



暗闇の車内の中。堂々たる表情で微笑みを浮かべる飛鳥馬様のお顔が月明かりに照らされる。



『おれにとってあやちゃんは、1番大切で大事なひとだから』



ふわっと蕾が咲いたように柔らかく笑う飛鳥馬様。

……分からないよ、何もかも。


何も持っていない、こんな良いとこなしなわたしを“大事なひと”だって言ってくれる飛鳥馬様のこと、全く理解できない。

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