冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「……どうして?」
「もう、幸せは願わないと決めたからです」
わたしが寂しいから、1人はどうしても孤独だからと、伊吹くんの手を取った1年前。
今思えば、わたしはあの手を取るべきじゃなかった。
あんな風に伊吹くんを傷つけて終わる最後なら、わたしはもう幸せなんて願わない。
自分の我儘のせいで、他人まで不幸にしてしまったら、元も子もないんだから。
「おれ、あやちゃんと一緒にいれるなら不幸になってもいいよ」
「どう、して……」
「ふふ、おれが今ここにいるのがその証拠」
太陽を背に、笑う飛鳥馬様。
わたしを抱きしめる腕を緩めて、そっと首筋に顔を埋めた。
「おれね、本当は太陽が昇った街に足を踏み入れたらいけないっていう家の掟があるんだよね」
「……っ、へ」